外来でリハビリをしていると
肩関節周囲炎の患者さんを担当することは少なくありません。
肩関節周囲炎は、
成人人口の最大26%が罹患しています。
症状としては、
これを読んでいるPT,OTの方はご存知と思いますが
慢性疼痛や肩関節の可動域制限、機能制限が生じます。
可動域制限の原因は、
肩甲上腕関節の制限だけでなく、
肩甲上腕リズムの破綻や肩甲骨の動きの低下も影響していると言われていますが、
近年は、病理学的状態よりも
収縮性組織の影響が大きいとも言われています。
このような原因によって、
肩甲上腕関節に制限が生じるのですが、
制限が生じている際は、
どのくらい動いているのでしょうか。
肩関節周囲炎症例の肩甲上腕関節、肩甲骨の動きを知ることで、
改善させる目標を絞りやすくなり、
制限因子もある程度特定しやすくなります。
そこで、
今回は、肩関節周囲炎症例の結髪動作等の運動学と筋活動のお話です。
対象は肩関節周囲炎症例(FS群)20例、正常肩群(N群)20例としました。
筋活動は
僧帽筋上部線維(UT)、僧帽筋下部線維(LT)、棘下筋(ISP)、大胸筋(PM)、大円筋(TM)の筋電図(EMG)を計測しました。
UT、LT、ISPのreference voluntary contraction(RVCs)を1kgの重錘を用いて測定し、正規化しました。
TMとPMはmaximum voluntary contractions(MVC)を測定し、正規化しました。
各関節の動きは、
3次元モーショントラッキングシステムを用い、
- Scaption、②首の後ろに手を回す動作、③腰の後ろに手を回す動作
以上の3つを測定しました。
結果です。
各群の年齢は、
FS群52.85±5.95歳
N群53.15±7.14歳でした
EMGの結果です。
ScaptinにおけるISPの活動は、
FS群が81.04% 、N群が107%、
ScaptinにおけるLTの活動は、
FS群が100.22%、N群が156.11%
であり、両筋ともにFS群が有意に低い結果となりました。
腰に手を回す動作におけるPMの活動は、
FS群に群が有意に高い結果になりました。
ROMの結果です。
Scaptionと首に手を回す際の最大上腕骨挙上角度はそれぞれ、
N群:130度、FS群95.18度
N群:117度、FS群95.73度
であり、
FS群が有意に小さい値となりました。
腰に手を回す動作における最大伸展角度は、
N群:56.24度、FS群48.03度
となり有意差を認めました。
肩甲骨の最大後傾は、
Scaption(N群21.24度、FS群:11.06度)、
首に手を回す(N群16.74度、FS群:4.74度)
という結果になり、有意差を認めました。
肩甲骨の最大上方回旋は
Scaption(N群:34.92度、FS群:28.19度)
という結果となり、有意差を認めました
過去の報告では、
肩関節疾患症例では、
僧帽筋上部線維の過活動が報告されていましたが、
今回の結果では、
上部・下部僧帽筋ともにの不活動という結果となりました。
棘下筋がFS群で機能しなかった理由として、
下部僧帽筋が機能しなかったため、
肩甲骨が安定せず、棘下筋が機能できなかったと考えられます。
腰に手を回す動作時に大胸筋が過活動する理由として、
1)疼痛によって筋活動が誘発された
2)大胸筋は伸展・内旋の拮抗的な役割として働いていた
が考えられます。
本日は以上です。