疼痛とROM制限が生じるFrozen shoulder(FS)は、
3つもしくは4つの段階があると言われており、
その段階は、
関節包の炎症、線維化、線維化の自然治癒です。
1934年コッドマンは、
「もっとも重症な症例でも、治療の有無にかかわらず約2年で回復し、
回復は常に確実であり、自信を持って期待できる」
と述べ、
多くが2年以内に改善する、予後が良好の疾患でした。
様々な研究においてもFSは、
比較的短期間に従来の方法にて治癒していました。
自然治癒や従来の治療方法にて良好な予後が報告される一方で、
臨床では発症から2年経過しても、
疼痛の残存とROM制限を訴える症例は少なくありません。
過去には、
糖尿病、年齢、性別、外傷の履歴、両側・片側、ROM、および発症からの期間をもとに、予後因子を特定した研究があり、
糖尿病、症状の持続期間、および両側性が予後因子である可能性があると報告されました。
しかし、FSの保存的治療の予後因子に関する文献は不足しており、エビデンスレベルは十分ではありません。
そこで今回は、
症例のデータから保存療法の結果を評価し、
FSの臨床的効果の予測因子を調査したお話です。
2方向以上の動きにおいて他動ROMが30度以上にて疼痛のある者、234肩(215症例)を対象としました。
全ての症例は、ROMを改善させるためのホームプログラムの指導を受け、
1日3回(各ラウンド15分)ホームプログラムを実施しました。
ホームエクササイズは、振り子運動、ウォールクライミングエクササイズ、棒体操、が主でした。ホームプログラムでは疼痛を生じさせないように指導を受けてました。
評価方法は、
合併症の有無、Visual Analogue Scale:VAS、American Shoulder and Elbow Surgeons (ASES)、Subjective Shoulder Value (SSV)、他動ROM(屈曲、外転、1st外旋、2nd内旋)
満足度を5段階、運動障害を3段階(正常のROMの25%、25%-50%、50%以上)に分類しました。
良好群と不良群の区別は、フォローアップ時の肩の状態とASESスコアの満足度に基づいて分類しました。
「非常に満足」「満足」を良好群、他の結果を不良群としました。
最終的なASESスコアの91.6以上を良好群、91.6未満を不良群としました。
単変量・多変量解析を用い予後に関する因子を調査しました。
結果です。
満足度は43.2%が非常に満足、29.1%が満足、普通が15.8%、不満が8.5%、非常に不満が3.4%でした。
72.2%が結果が良好、27.8%が不良群となりました。
ROMは
60.3%が正常、29.9%が軽いROM制限、7.7%が中等度のROM制限、2.1%が重度なROM制限が残存でした
疼痛は、
20.1%がVAS3以上の疼痛を最終的に有していました。
単変量解析の結果、予後不良因子は、男性、糖尿病、両側性、発症から初診時までの期間が不満足度に関する結果と関連していました。
多変量回帰分析の結果、発症から初診時までの期間が不満となる因子として唯一特定されました。
ASESに基づく単変量解析の結果、糖尿病、両側性、発症から初診時までの期間が予後不良に関する因子と特定されました
ASESに基づく多変量解析の結果、発症から初診時までの期間が予後不良因子となりました。
今回の論文では、発症から初診までの期間が拘縮肩の予後に影響を及ぼすということでした。また別の報告では、発症から2年以上経過すると予後が不良になるという報告もあります。
拘縮肩を発症した多くの方は、発症後すぐに来られる方は少ない印象で、3ヶ月や半年、中には1年以上経過してから外来クリニックに来られる方も珍しくはありません。
今回の対象者も初診時における発症からの期間は平均9ヶ月ということで、できるだけ早期に受診していただくために、拘縮肩の病態について我々理学療法士側から早期に受診する必要性の情報を発信することも今後の課題と考えられます。
また、
リハ成績ですが、
ROMが60%、結果が良好が約70%という結果でした。
病態が不明なことやリハビリに対してまだエビデンスが得られていない状況もあり、あまりリハ成績はよくありません。
あと10,15%ROMや結果を改善させるために、病態の解明やリハビリを確立していく必要があると考えさせられました。
また、
自身のリハご成績が今回の結果を上回っている方は、素晴らしい手法やリハビリ戦略を世間に発信していただけると幸いです。
本日は以上です。