回旋筋腱板の外科的治療後の再断裂の割合は20-50%とも言われています。
しかし、
腱板筋に機能不全が生じていても肩関節の影響のない方がいます。
過去の報告では、
96の無症候性の症例のMRIを見てみると、
34%にcuffの病変が見られ、
60歳以上では54%が変性していたと言われています。
ここで疑問に思うことは、
肩関節における三角筋の機能はなんでしょう。。。。?
三角筋の機能は、
- 棘上筋の病変時に肩関節の安定性に寄与する
- 上腕骨頭の下方への変位に抗する
と報告されていますが、まだ議論の余地があります。
そこで、
今回は、
上腕骨を固定せずに外転時の三角筋の機能を調査したお話です。
実験は6例の検体を用いました
肩甲上腕関節のみ残し、肘関節は切断しました。
鎖骨は外側1/3にて切除、三角筋前部線維は温存された
三角筋、棘上筋、肩甲下筋腱、棘下筋腱、小円筋上腕二頭筋長頭およびすべての関節包以外の軟部組織は除去しました。
肩峰は冠状面で後方で切断しました
肩峰と鎖骨外側1/3に穴を開け、この穴に紐を通します。
紐の先を滑車に通し、紐を引っ張り肩峰と鎖骨を動かし、外転の動きを再現します。
動作の解析は、
肩甲骨の外縁と上腕骨の骨幹に赤外線マーカーを取り付け、
外転動作時の肩甲骨と上腕骨の運動を解析しました。
結果です。
肩峰と鎖骨が25mm平行移動させると、
外転は24-30.5度
屈曲は-30.5度-1.5度
回旋は内旋5度-12度の外旋
以上のような動きをしました。
この時、
上腕骨頭の変位は3例が5mm以下でした。
外転の動きは三角筋前部と中部線維を引っ張ることで再現でき、
肩甲上腕関節の安定性に機能することがわかりました
また、
三角筋は、
上腕骨頭の上方・後方・前方への肩甲上腕関節の動的なアライメント変化に対して機能することがわかりました
結論として、
三角筋のみでも外転時のスタビリティとして機能することがわかりました。
この研究の限界として、
検体の烏口肩峰アーチを除去してしまったことです。
これは垂直変位を増加させる要因の一つとなります。
また、
鎖骨と肩峰を水平移動させ、外転運動を再現したのですが、
これだと三角筋の筋収縮を正確に再現できていないことです。
特に筋の垂直成分を短縮は再現できていないことです。
いかがでしたが、
論文を否定的に見ると、
肩峰の切断や烏口肩峰アーチの除去など実際の肩関節の環境と異なること、
筋の付着部を水平に動かすことを外転の再現としたこと、
に対しては疑問が残ります。
ただ、
冒頭でも述べたように、
腱板断裂症例でも肩関節の挙上が可能な症例が存在することから、
今回の結果を踏まえると、
三角筋前部・中部線維も肩関節の外転に大きな役割があると考えられます。
この話を肩に詳しい理学療法士にしたところ、
三角筋前部線維のトレーニングにて棘上筋断裂の症例の屈曲動作の改善が認められる研究発表があると教えてもらいました。
こちらの報告も後日またしたいと思います。
本日は以上です。