拘縮肩と変形性肩関節症の肩甲骨の動きは?

肩関節

肩甲上腕リズム(SHR)は、

上腕骨の角度に比例して変化し、

成人正常肩の挙上の約30-40%に寄与すると言われています。

 

拘縮肩となると、

このSHRが乱れ、

挙上時に上方回旋が早期に起こると言われています。

 

また、

変形性肩関節症においても

肩甲上腕関節に可動域制限が生じ、

肩甲骨の上方回旋による代償が見られると言われています。

 

 

拘縮肩や変形性肩関節症における

3次元の肩甲骨の運動学を理解することは、

関節可動域運動のヒントを得ることができ、

また、

人工肩関節全置換術(TSA)前後に関わるリハビリにも役立ちます。

 

そこで、

今回は変形性肩関節症と拘縮肩の肩甲骨の運動学のお話です。

 

 

 

 

変形性肩関節症もしくは拘縮肩と診断された32名を対象としました。

 

肩甲骨および上腕骨の動きの計測には3次元トラッキングシステムを使用しました。

 

測定項目は、

上肢を屈曲および外転した際の

肩甲骨と上腕骨の角度および

胸郭に対する肩甲骨の前後移動、上・下方回旋、前後傾を測定しました。

肩甲骨の回旋は、上肢挙上の30°、45°、60°最大挙上時に測定しました。

 

 

比較したのは、

  • 健側と患側
  • 肩甲骨の回旋に影響する因子(疾患、挙上面、肩甲上腕関節の角度)
  • 肩甲上腕リズムと罹患期間、最大挙上角度の関係

以上を比較しました。

 

 

 

 

それでは結果です。

11例が片側の変形性肩関節症

5例が両側の変形性肩関節症

16例が片側の拘縮肩でした。

 

 

まず患側vs健側の比較です。

 

変形性肩関節症では、

肩甲骨の後方移動は、

肩関節屈曲において有意に低い値でした。

一方、外転では有意差を認めませんでした。

肩甲骨の上方回旋は、

屈曲・外転において有意に大きい値となりました。

肩甲骨の後傾は屈曲・外転共に有意差を認めませんでした。

SHRは、屈曲・外転ともに大きな値となりました。

 

拘縮肩では、

肩甲骨の後方移動は、

屈曲・外転共に肩甲骨の後方移動が有意に少ない値となりました。

肩甲骨の外旋は

屈曲・外転ともに有意に大きな値となりました。

肩甲骨の後傾は有意差を認めませんでした。

SHRは、屈曲・外転ともに大きな値となりました。

 

 

次に、

肩甲骨の動きに影響する因子についてです。

 

肩甲骨の前後移動へ影響を及ぼす因子は、

挙上面と疾患でした。、

今回の結果では、

拘縮肩および外転において肩甲骨の後方移動が少ない値となりました。

 

一方、

肩甲骨の前後傾はへ影響を及ぼす因子は、

挙上面でした。

今回の結果では、

屈曲よりも外転で肩甲骨の後傾が少ない値となりました。

 

 

最後はSHRについてです。

SHRは、

拘縮肩で有意に高い値となり、反対側には有意差を認めませんでした。

 

罹患期間とSHRの関係性は、

変形性肩関節症では、中等度〜弱い相関を認めました。

一方、

拘縮肩は罹患期間との相関を認めませんでした。

 

最大挙上角度とSHRとの関係は、

変形性肩関節症、拘縮肩ともに弱い負の相関を認めました。

 

 

 

 

肩甲上腕関節が制限されている場合、

上肢挙上の際に、

過度の肩甲骨の動きを取り入れるという代償戦略が導入されます。

 

そのため、

GHの動きが制限されやすい

拘縮肩の方が肩甲骨の上方回旋や後方移動が増加しやすくなります。

 

そのため、

拘縮肩では僧帽筋の過活動が報告され、

上部・下部の僧帽筋の活動のバランスが崩れている可能性があるとも言われています。

 

 

今回の論文を踏まえて肩甲上腕関節が制限される疾患のリハビリをどのように考えるかというと、

  • 肩甲骨の代償の捉え方
  • 肩甲骨の代償に用いられる筋のoveruseのケア

がポイントと考えられます。

 

  • 肩甲骨の代償の捉え方は、

代償を「良し」とするか「悪し」と捉えるかです。

「良し」として捉えるのであれば、

肩甲骨周囲筋の柔軟性を増加させ、

肩甲骨の上方回旋や後方移動の代償を生じさせ、

見た目上挙上できているように見せ、上肢の可動範囲を増やすことも一つと考えられます。

一方、

「悪し」として捉えるのであれば、

正常肩と同等の肩甲骨の動きの再学習および肩甲上腕関節の可動域改善に注力する必要があります。

 

  • 肩甲骨の代償に用いられる筋のoveruseのケアですが、

過去の報告にあるように、

僧帽筋のoveruseや活動のバランスが崩れるmisuseが生じます。

Overuseに対してはストレッチ等のケア、

Misuseに対しては、筋活動の再学習等の必要があると考えられます。

 

 

 

本日は以上です。

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