日本の大腿骨近位部症例は増加傾向にあり、
これは海外でも同じようです。
大腿骨骨折後の方の多くは、
歩行が難しいと感じるようです。
また、大腿骨骨折後の歩行能力の改善のためのリハビリプログラムのエビデンスも、
現在は十分ではありません。
地域社会で必要とされる歩行(Community Ambulation:CA)(例えば信号が変わりきるまでに横断歩道を渡る等)は、持久力や動的バランス、大腿四頭筋力、十分な歩行速度が必要です。
過去に大腿骨骨折症例に対する介入研究が行われ、
よい結果が報告されていますが、
対称群にも介入しており、
治療プログラムの効果がはっきりわかっておりません。
また、過去の報告はCAの評価が十分されているとは言いにくい状況です。
そこで今回は、
CAの改善のために、16週間介入し、
6分間で300m歩行可能となる症例の割合を調査したお話です。
理学療法士の介入は、
16週間行われ、1回の時間は60分でした。
介入は訪問リハビリです。
最初の8週は3回/週訪問、
残りの8週は2回/週訪問しました。
介入群のリハビリメニューですが、
下肢筋力増強運動は、
レッグプレス、股関節外転、股関節伸展、踵上げを8回3set実施しました。
股関節外転・伸展は、
minipressという機械を用い、
8RMとしました。
踵上げの運動負荷は自重を用いました。
持久力改善練習は、
2-3分のウォーミングアップ後、
可能であれば屋外・屋内歩行、座位での活動を行ないました。
運動負荷は、
20分、安静時心拍数の50%増を目標に行いました。
また、
運動負荷の確認は2週ごとに行いました。
コントロール群は、
22種類のアクティブな可動域運動と、
下肢筋群への軽いTENSを実施しました。
首、体幹、上肢および下肢に焦点を合わせたアクティブな可動域運動は、
運動ごとに3回から20回の繰り返しを行いました。
目標時間は20分以上です。
TENSは、
大腿四頭筋、臀部、下腿の運動点の近くで両側に実施しました。
周波数を80パルス/秒、パルス持続時間を50μ秒、
振幅は、ピリピリ感じる程度にし、
各部位7分間実施ました。
歩行能力の評価は、
初期評価、
介入後16週、40週に実施しました。
評価は6分間歩行テストを行い300m(0.8m/s)が可能であればCAが可能と判断し、
各群の300m歩行が可能であった人数の割合を調査しました。
結果です。
16週間のフォローでは、
介入群22.9%、
コントロール群17.8%が
CAの基準を満たしました。
また、
40週後の評価では、
介入群21.7% 、
コントロール群21.5%がCAの基準を充しました。
16週、40週において
介入群とコントロール群との比較に有意差は認められませんでした。
この研究では、
「介入群のリハビリメニューが優れていた」
といった結果を期待していたと思いますが、
結果としてコントロール群と有意な差を認めませんでした。
有意差が出なかった原因として、
ひとつは
「8RMを8回3setの運動負荷」が
「22種類のアクティブな可動域運動」と同程度の運動負荷であった可能性があります。
そのため、
介入群に対して高負荷で運動療法を行なっているつもりが、
両群の運動負荷に差が生じず、
結果として、
CAの達成率に有意差を認める結果とならなかったのではないでしょうか。
もう一つは、
両群の対象者のゴール設定が適していなかったのではないでしょうか。
今回の研究の目的はCAの改善、
つまり6分間歩行において300m以上を目標としました。
しかし、
両群において上記の条件が達成できたのは、
介入期間の16週の間に20%前後でした。
これは少ないと思います。
対象が「大腿骨骨折」であれば、
CAが可能な「大腿骨骨折」症例を選択し、
その症例に対して介入研究を行うことで、
もしかしたら今回の介入の結果に有意差を認めたかもしれません。
いかがでしたか。
最近、
海外の文献を読んでいると、
頻度や運動負荷がきちんと設定され、
日本のリハビリよりも
運動負荷や頻度が強く・頻回に行なっていると感じています。
臨床では、
きちんとした運動負荷の設定をして、
もっと運動を取り入れていってもいいのかもしれません。
本日は、以上です。