肩甲骨の向きは肩峰と上腕骨の位置関係に影響を与える

肩の運動学

上肢の挙上は、肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の複合的な動きです。

しかし、

肩甲骨が異常な動きをすると、

肩峰下にて腱板が圧迫されるリスクが増加すると言われています。

 

同じように、

肩甲骨と上腕骨の同調した動きが乱れると、

腱板は烏口肩峰アーチに挟まれるとも報告されています。

 

このような

肩甲骨の動きのパターンが崩れる原因について、

臨床では、

筋力低下、疲労、麻痺と言われています。

 

また、

Normalとインピンジメント症候群の

運動学の違いを見てみると、

MRIを用いた研究では

肩甲骨の位置の変化が、

肩峰と上腕骨の距離に影響を及ぼす

と報告されています。

 

関節上腕靭帯の切除が、

上腕骨の各変位に影響を及ぼすことに注目し、

過去に研究されました。

その結果、

上腕骨の上方変位は下方への変位よりわずかに低い値となり、

上腕骨の上方変位は、

烏口肩峰靭帯の断裂や肩峰の外科的変化が

上方変位に影響を及ぼしていることがわかりました。

 

しかし、

肩甲骨の向きがインピンジメント症候群に

及ぼす影響はまだ詳しく明らかになっていません。

 

そこで、

今回のお話は、

検体を用いて上腕骨の肩峰への接触圧と肩甲骨の向きを調査したお話です。

 

 

 

 

対象は、

8例の検体の肩甲上腕関節を用いました。

 

肩甲骨と上腕骨を固定し、

肩甲骨は特別なジグに装着し、正確な肩甲骨の動きを再現可能としました。

 

上腕骨は、肩関節最大内旋位+外転90°にて固定し、

肩甲骨の初期位置は、

後方傾斜0°、上方回旋30°内旋40°としました。

 

測定時の肩甲骨の位置は、

上方回旋が20,25,30,35,40°、

内外旋は内旋10,5°、0°、外旋5,10°です。

 

以上の条件にて、

肩峰下における接触力と肩峰下と上腕骨頭の距離を測定しました。

 

 

 

 

それでは結果です。

 

肩甲骨の外旋および後方傾斜における

肩峰下のスペースの増減は、

どの条件においても有意差を認めませんでした。

 

一方、

肩甲骨の上方回旋には有意差を認め、

上方回旋の量に反比例して、

肩峰下のスペースは有意に減少していきました。

 

 

 

 

インピンジメント症候群の病因は、

まだ完全に回旋筋腱板と証明されていませんが、

多くの研究者や臨床家が

インピンジメント症候群の原因は回旋筋腱板だと考えられています。

 

今回の結果や過去の報告から、

インピンジメント症候群は肩甲上腕関節の動きのパターン、

特に肩甲骨の動きのパターンが

インピンジメント症候群において重要だと考えられます。

 

もし、

肩甲骨の動きとインピンジメントの関係を特定することができれば、

肩甲骨の動きのパターンを修正する新しい理学療法戦略が

考案されると思います。

 

インピンジメント症候群については多くの研究が行われており、

その研究の半数が肩甲骨の後傾が減少することが

影響していると述べています。

一方、

残りの半分は肩甲骨の後傾に有意差はなかったと報告しています。

4つの研究が肩甲骨の外旋が影響し、

1つの研究がで肩甲骨の内旋が増加したことが原因の一つと報告、

2つの研究が肩甲骨の上方回旋が減少、

3つの研究が肩甲骨の動きに問題が無かったと報告しています。

 

過去の報告の結果が様々な理由としては、

肩甲骨の動きに関わる筋が多いため、

筋収縮のわずかな変化が肩甲骨の動きに影響を及ぼすのではないでしょうか。

 

 

今回の研究結果だけでは、

インピンジメント症候群の原因は特定できませんが、

上方回旋の量に反比例して

肩峰と上腕骨のクリアランスが低下するのであれば、

回旋に抵抗できる筋の筋力増強運動や

回旋が強制されないように肩甲上腕関節の柔軟性の獲得等が必要と考えられます。

 

 

本日は以上です。

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